色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum;XP)A群遺伝子欠損マウス(以下XPマウス)の、疾患モデルマウスとしての有用性を光皮膚科学的に検討し、さらにXPの光線過敏および高頻度光発癌の病態形成機序を検討した。 1.紫外線急性皮膚炎症に関する実験 中波長紫外線(UVB)照射による耳介浮腫を経時的に測定した。XPマウスでは、照射24時間後より野生株マウスに比較して著明な浮腫がみられ、照射5日後まで増強し続けた。組織的にも、XPマウスでは、著明な表皮の壊死およびsunburn cell形成、真皮の浮腫および炎症細胞浸潤、赤血球漏出がみられた。また、psoralen塗布後の長波長紫外線(PUVA)処置による耳介腫脹もXPマウスでは著明に増強されていた。以上の所見は、XP患者の臨床皮膚症状と一致する。 2.接触過敏反応の感作性に関する実験 DNFBをハプテンとした経皮感作能を検討したところ、野生株マウスと同程度の接触過敏反応が誘導された。XP患者での接触過敏反応は、報告者により正常或いは低下と、定説はない。 3.紫外線免疫抑制に関する実験 XPマウスでは、UVB照射によるADP陽性ランゲルハンス細胞数の減少が著明で、その回復も遅延していた。UVB照射部位、非照射部位のいずれにDNFBを塗布して感作した場合にも、接触過敏反応の誘導が低下していた。この局所性および全身性紫外線免疫抑制の増強は、XP患者の高頻度皮膚発癌および内臓発癌の病態形成機序に関与する可能性がある。
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