研究概要 |
当初の研究計画では、ラットの脊柱管を一部開放し、シリコン製バルーンカテーテルを挿入し、これを膨張させることによって機械的な脊髄圧迫とする予定であったが、材質上一定の加圧を維持するのが困難であった。このため経時的(3日後、7日後、14日後、28日後、56日後)なMRIの施行は困難で、3日後のみ脊髄のT2強調像,造影前後のT1強調像をスピンエコー法にて撮像し、脊髄断面の病理変化との対比は行わなかった。得られた結果として、これまでの急性の脊髄損傷の画像診断に関する動物実験モデルの報告とは異なり、脊髄挫傷の要素よりも慢性的な浮腫や脊髄血液関門の破壊の要素が強いと思われ、造影剤による増強効果が認められた。ただし、今回の検討ではこうした画像所見の経時変化と圧迫の強さとの関係が立証されていないので、バルーンカテーテルを改良し、持続的使用に耐えられるように検討しているところである。また、圧迫の程度の評価も確立されておらず、X線にて脊柱管の狭窄を定量化することを考慮中である。さらに経時的な画像の評価のためには、常に同一の標本の本位で同一の脊髄の部位を撮像することが要求されており、新たな固定具の開発が望まれるところである。これらの点が解決されれば、圧迫の程度や期間とこうしたMRIの変化がどう対応するかを検討でき、臨床に有意義であると思われる。さらに病理学的検討も可能となり、臨床上よくみられている慢性の脊髄障害(例えば、脊柱管狭窄症による、慢性的な機械的脊髄圧迫による脊髄障害)患者のMRI所見の説明が可能であると考えられる。
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