研究概要 |
心筋の血流シンチグラフィ製剤として新しく開発された^<99m>Tc-methoxyisobutyl isonitrile (MIBI)は、腫瘍への良好な集積性を有し、さらに、多剤耐性と関連する膜輸送蛋白(p-glycoprotein, Pgp)の標的物質でもあることから最近注目されている。本研究では、^<99m>Tc-MIBIの腫瘍集積性とPgpの発現量を比較評価し、本シンチグラフィ製剤の多剤耐性腫瘍診断における有用性を検討することを目的とした。 基礎実験として、培養細胞および担癌ヌードマウスを用い、腫瘍細胞への^<99m>Tc-MIBIの集積性を検討した。まず、Pgp過剰発現株(KB-C2)をコントロール細胞株(KB-3.1)とともにsubconfluentな状態まで培養し、^<99m>Tc-MIBIの取込みを経時的に観察した。KB-C2株ではKB-3.1株に比べ細胞あたりの最大集積量が低く、消失速度も早い傾向が認められた。また、両細胞株間の集積性の差はベラパミール処理により減弱した。次に、これら2つの細胞株を同じヌードマウスの両側腹部にそれぞれ移植し、腫瘍が小指頭大に発育した時点で、^<99m>Tc-MIBIを静脈内投与し、腫瘍部への集積率を検討した。単位重量あたりの^<99m>Tc-MIBIの集積率は、KB-3.1株の方がKB-C2株より有意に低い値を示した。同時に投与した^<201>TlClとの比でもKB-3.1株の方が有意に低く、単位血流量あたりの集積率にも差があることが示唆された。 続いて、腫瘍摘出術施行前の乳癌患者5名に対し、^<99m>Tc-MIBIによるシンチグラフィを実施した。5例中2例で、原発部位への明らかな集積が認められた。現在、摘出術時に入手した腫瘍組織片中のPgp発現量の定量を進めており、今後、追加した症例とともに検討する予定である。
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