アルツハイマー型痴呆においてアポリポ蛋白E(ApoE)表現型とシングルフォトンエミッションct(SPECT)による病変分布との関係を検討した。 対象はアルツハイマー型痴呆23例(早期発症型14例、晩期発症型9例)、平均年齢65.7±8.7才、ピック病2例であった。ApoE表現型は、フェノタイピングアポEキット(常光)を用いて、等電点電気泳動を行い判定した。SPECTはHEADTOMEIIを用い、主としてTc-99m-ECDをトレーサーとして測定した。SPECT所見は視察的に、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の低下の有無を判定し、より重症度の影響を受けにくい分布パターンという意味で側頭頭頂優位の低下、前頭葉あるいは側頭葉優位の低下の群に分けた。 ApoE表現型は、E3/3が15例(65.2%)、型E3/4が7例(30.4%)、E4/4が1例(4.3%)であった。早期発症例では、E3/3が10例(74.1%)、E3/4が3例(21.4%)、E4/4が1例(7.1%)、晩期発症型では、E3/3が5例(55.6%)、E3/4が4例(44.4%)で、日本人正常対象では70%強がE3/3型であるとされるのと比べ、晩期発症でE4型を持つ例が多かった。ピック病では2例ともE3/4であった。ApoE表現型とSPECT所見との関係では、E3/3群で頭頂葉低下あり11例、なし4例、E3/4またはE4/4群で頭頂葉低下あり1例、なし7例で、E3/4またはE4/4群では有意に頭頂葉低下例が少なかった。E3/4またはE4/4群では、前頭葉あるいは側頭葉優位の低下が有意に多かった。E4は早期発症、晩期発症をとわず、従来アルツハイマー型痴呆のSPECTの特徴とされる頭頂葉の障害とは関係がなく、むしろ前頭葉あるいは側頭葉優位の障害と関係していた。さらに、ピック病でもE4が多いことから、E4は前頭葉・側頭葉の変性に関与している可能性が示唆された。
|