従来、精神分裂病とドパミンD2受容体の関係が指摘されている。D2受容体にはD2、D3、D4受容体があり、各々多型性が存在することがわかった。現在までのところ、これらの多型性と精神分裂病との関係を否定する報告が多い。これらのD2様受容体の多型性それ自体は精神分裂病の病因そのものとは関係がなくても、臨床症状(特に陽性症状や抗精神病薬の反応性など)に寄与している可能性がある。また、D2様受容体の多型性の組み合わせが症状に影響を与えているのかもしれない。今回は、以上の点を検討してみた。対象は浜松医科大学附属病院精神科神経科および関連病院で治療を受けている精神分裂病患者である。研究の主旨を説明し、文書による同意を得た。診断基準はDSM-IVを用いた。PANSSを用いて臨床評価を行った。抹消血液よりゲノムDNAを抽出し、D2様受容体遺伝子の多型性を含む部分をPCR法により増幅した。制限酵素による切断やSSCP法により多型性を確認した。各々の遺伝子の多型性およびそれらの組み合わせについては、精神分裂病者と健常対照者に統計的に有為な差はなかった。D4E1(A1/A2)(D4受容体エクソン1にある12bpの繰り返しが2回と1回のもの)を持つ精神分裂病者の方が、D4E1(A1/A1)を持つ精神分裂病者よりも、治療前の陽性症状の得点が有為に低かった。ただ、幻覚、妄想、連合弛緩の項目では有為差はなく、興奮の項目のみで差がみられた。その他の項目では有為差はなかった。これらの結果はD2様受容体の多型性は、精神分裂病の原因、症状に与える影響がないことを示唆する。
|