脳内の限られた細胞内でわずかにしか発現していない遺伝子の機能を調べるため、蛍光化プライマーを用いたRT-PCR法によるmRNA微量定量法と、神経細胞の初代培養を組み合わせた実験系を開発した。これを用いてアロマターゼ遺伝子の発現を解析し、以下の成果を得た。 1)胎生期の発育に伴うアロマターゼmRNAの増加のin vitroでの再現 スライス培養ならびに分散細胞培養の手法を用いて発育の各段階におけるマウス胎児間脳部をin vitroで維持し、アロマターゼmRNAの発現量の経時的な変化を調べた。どちらの培養方法でも、胎生10日(E10)、E11の胎児由来の神経細胞ではアロマターゼmRNA量はほとんど変化しなかった。しかしE12、E13のマウスを用いた場合には、in vivoで見られるのと同様のパターンでアロマターゼmRNAの増加が認められた。これらより胎生期の間脳神経細胞にはin vitroにおいても時間経過に伴うアロマターゼ発現の増加が認められ、これはE12以降の神経細胞自身にプログラムされている可能性の高いことが明らかにされた。 2)神経伝達物質によるアロマターゼmRNAの発現調節機構の解析 出生前の発育に伴う脳アロマターゼmRNAの増加をもたらす分子機構を解析するため、E13マウス間脳神経細胞を用いて各種薬剤の効果を検討し、多くの神経伝達物質やsecond messengerが発現調節に関わっていることを明らかにした。
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