研究概要 |
神経性過食症の生物学的基盤を明らかにするために、ラットに時間制限給餌を繰り返した後のrebound hyperphagia状態、およびそれに心理的ストレスである閉所条件を加えた時の摂餌行動の変化と、その時の(臭覚・味覚・内蔵感覚などの統合を行っていると考えられている)脳内扁桃体のセロトニン・ドパミン代謝についてマイクロダイアリシス法を用いて検討を加えた。ラットに時間制限給餌を繰り返し加えると摂餌量が有意に増加しrebound hyperphagiaを認め、それに閉所条件を加えるとさらに摂餌量は増加した。単回の絶食後の摂餌(A群)では扁桃体の細胞外液中セロトニン(5HT)濃度、その代謝産物の5HIAA濃度とも基礎値に比し有意に低下した。しかし、rebound hyperphagia状態(B群)、およびそれに閉所条件を加えて摂餌させたとき(C群)の5HT・5HIAA濃度は基礎値との間に有意な変化を認めなかった。また、A群では摂餌により他の2群に比し有意に5HT濃度が低下した。扁桃体の細胞外液中ドパミン濃度、その代謝産物のDOPAC,HVA濃度いずれにおいても各群での摂餌による有意な変化を認めなかった。これらのことから、扁桃体のセロトニン代謝は通常(単回の制限給餌後)の摂餌で低下するが、rebound hyperphagia状態ではその変化が抑制されていることが示された。また、この条件下で閉所条件を加えた時の摂餌行動の変化にセロトニン代謝は関与していないことが示された。一方、同部位のドパミン代謝はこれら一連の摂餌行動の変化に関与していないと考えられた。今後さらに人間の神経性過食症に類似した動物モデルを考案し、その生物学的基盤を明らかにしていきたい。
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