今回の研究の目的は、リチウム投与前に、meta-Chlorophenylpiperazineを用いた神経内分泌的負荷試験(以下、負荷試験と略す)を行い、それによって推定された脳内セロトニン神経系の活動性でもって、リチウム投与後の治療効果が予測できるか否か、確認することにある。最初の対象は、強迫性障害に羅患し、clomipramine 250mg/dayを長期間投与されている患者であった。この患者に対し、負荷試験を行った後にリチウムを追加し、3週間後に再び負荷試験を行った。その結果、リチウム追加前の負荷試験の際のホルモン分泌反応と比べ、投与後のホルモン分泌反応は軽度ながら増強していた。また、強迫症状もリチウム追加後は軽度ながら改善していた。次の対象は、強迫症状を有する精神分裂病患者であった。この患者においては、それまで投与されていた抗精神病薬にリチウムを追加し、その前後で負荷試験を行った。その結果、リチウム追加前と比較して3週間後にはやはり軽度ながらホルモン分泌反応が増強していた。しかしながら、精神症状は不変であった。異常、最初の症例はリチウムによる脳内セロトニン神経系の活動性増加と強迫症状の軽快がうまく相関している一方で、2番目の症例は相関していない。さらに、症例数を増やしての検討が必要である。
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