研究概要 |
私達はこれまでマウスのインスリノーマ細胞(MIN6)を用いてインスリン分泌の測定、蛍光色素法による細胞内各種イオン濃度の測定、そして細胞内情報伝達物質の定量によりMIN6細胞におけるインスリン分泌機構を解明してきた。インスリン分泌機構は大きく3つに分類できる。 a.高グルコース細胞内ATPの増加を行してATP依存性K^+チャンネルを抑制し、電位依存性Ca^<2+>チャンネルを開口させ細胞内遊離Ca^<2+>(〔Ca^<2+>〕i)の増加後インスリン分泌を誘起する。 b.グルカゴンやグルカゴン様ペプチド(GLP-1)などはCyclicAMP産生と〔Ca^<2+>〕iの上昇がインスリン分泌機構として考えられている。 c.アセチルコリンやカルバコールなどはイノシトールリン脂質代謝を亢進して〔Ca^<2+>〕iを上昇させインスリン分泌を誘起する。 以上3つのインスリン分泌機構において〔Ca^<2+>〕iの増加がインスリン分泌において中心的な役割を担っている。一方、他の細胞ではイノシトールリン脂質代謝の亢進や〔Ca^<2+>〕iの増加はプロテインキナーゼC(PKC)やmitogen-activated protein kinase(MAPキナーゼ)を活性化し細胞の増殖やホルモン分泌に深く関与している。よって膵β細胞においても3種のインスリン分泌刺激によりPKCとMAPキナーゼが活性化されインスリン分泌に重要な役割を担っている可能性が示唆されるが現在まで不明であった。本研究ではこの3種のインスリン分泌機構におけるPKCとMAPキナーゼの役割を解明するためMIN6細胞における代表的なインスリン分泌刺激(高グルコース、GLP-1,カルバコール)を行いPKCとMAPキナーゼを測定して同酵素がインスリン分泌刺激時に賦活化されるか否かを検討した。その結果膵β細胞において、これらの3種のインスリン分泌刺激によりMAPキナーゼが賦活化されることが今回解明された。
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