研究概要 |
最近、Apoptosisと免疫とのかかわりが注目され、活性化したリンパ球の消去だけでなく,細胞障害性T細胞が標的細胞に発現したFasを認識し、標的細胞にFas-mediated apoptosisを誘導することが明かになった。悪性眼球突出症では腫大した外眼筋にリンパ球浸潤がみられることから、病因に自己免疫機序の関与が考えられているが、詳細は不明である。そこで今回私どもは悪性眼球突出症の後眼窩の病態におけるapoptosisの役割を明かにする目的で、Apop Tag^<TM>を用いたIn situ endolabeling of fragmentated DNA法にて本症患者の後眼窩組織におけるapoptosisの有無を検討し、さらにapoptosisと関連の深いFas、Fasリガンド、bcl-2の発現について検討した。 (結果) 1) Apop Tag^<TM>陽性細胞は眼症患者11例中8例に外眼筋細胞および間質の細胞に認められた。正常外眼筋にも一部陽性細胞が認められた。 2) Fasの発現は眼症患者12例中7例に認められた。正常外眼筋(4例)には認められなかった。間質にも発現は認められなかった。 3) Fas ligandはリンパ球浸潤を認めた検体(5例中1例)でのみ浸潤リンパ球に発現がみられた。 4)外眼筋組織にはbcl-2の発現は認められなかった。 5) Apop Tag^<TM>陽性細胞の存在や外眼筋におけるFas発現と、甲状腺自己抗体価や眼症の重症(外眼筋腫大度、後眼窩容積)などとの間には有意な相関は認められなかった。 (考察)悪性眼球突出症の外眼筋組織にはFasの発現が多く、Fasを介するapoptosisによる外眼筋障害機序の存在が示唆された。
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