アンジオテンシンII(AII)受容体サブタイプのうち、血管・副腎型受容体でこれまでのAIIの殆どの作用に関与するとされるタイプ1(AT1)受容体と異なり、最近我々が構造を明らかにした胎児型受容体であるタイプ2(AT2)受容体は未だ不明な点が多いが、今回、その機能、発現調節および意義について、以下の知見を得た。 1.AT2受容体の細胞内情報伝達機構の解析:HEK293細胞を用いてAT2受容体大量発現細胞株を樹立し、細胞内情報伝達、G蛋白共役について検討したところ、既知の主要なG蛋白を介した情報伝達系とは共役せず、リガンド結合後もinternalizationを起こさないが、還元条件下ではG蛋白とinteractしうることを示した(Mol Cell Endocrinol)。このG蛋白の同定と新たな情報伝達機構について解析中である。 2.AT2受容体遺伝子の構造解析とgene transferによる受容体遺伝子発現調節機構の検討:マウスAT2受容体遺伝子の5′隣接領域の構造を明らかにし、gene transferを用いたプロモータ機能解析を行った結果、細胞増殖に依存したAT2受容体遺伝子の転写調節には、核内転写因子であるインターフェロン調節因子(IRF-1及びIRF-2)による正及び負の調節が重要であることを示し、細胞増殖やアポトーシスとの密接な関連を示唆した(J Biol Chem)。ヒトAT2受容体遺伝子についても解析を進めている。 3.ヒト及び疾患モデル動物組織におけるAT2受容体発現の解析と生理的、臨床的意義の検討:ヒト組織におけるAT2受容体遺伝子発現の局在とその調節を結合実験、Northern blot法等により解析した結果、子宮筋に多く発現し、妊娠により著しく減少することを認めた。現在この意義について検討を進めている。さらに、高血圧ラット等の疾患モデル動物におけるAT2受容体遺伝子発現を解析し、その意義について検討中である。
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