NK細胞は主要組織適合抗原非拘束性に標的細胞を障害するリンパ球であり、その形態からlarge granular lymphocyte(LGL)と呼ばれている。NK細胞の分化成熟を観察する実験系としてラット長期骨髄細胞培養法(long term bone marrow culture: LTBMC)が報告されている。本培養法では4週間培養したラット骨髄細胞にIL-2を添加することによってNK細胞が誘導されるが、NK細胞の誘導にはIL-2以外の第2の液性因子が関与することが知られている。今回、筆者はstem cell factor(SCF)のNK細胞分化への影響をLTBMCの実験系を用いて検討した。 まずNK細胞誘導に及ぼすIL-2濃度、IL-S添加後の培養日数の影響を検討したところ、マウス骨髄細胞を5%FCS添加RPMI1640で培地を交換することなく4週間培養後、IL-2 200U/ml添加し、さらに6-9日間培養した場合に、最も効率よくCD3-NK1.1+細胞が誘導され、高いNK活性を示した。さらにSCFのNK細胞成熟への関与を見るために、4週間培養後の骨髄細胞にSCFを添加し3日間培養した後にIL-2を添加したところ、SCF非添加群に比して2-3倍のNK細胞が誘導されたが、NK活性には変化がなかった。このSCFの効果は用量依存性であり、SCF100ng/mlで最大効果が得られた。さらにSCF単独ではCD3-NK1.1+細胞は誘導されなかった。以上の結果より、SCFはNK細胞誘導に必須のサイトカインではないが、NK前駆細胞を効率的に増加させることによってNK細胞への分化を促進する可能性が示唆された。
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