白血病細胞の増殖分化は様々なサイトカインの作用により修飾される。我々は白血病細胞に発現しているstem cell factor(SCF)受容体(c-kit)とgranulocute colony stimulating factor(G-CSF)受容体に注目し、白血病細胞の増殖分化との関係を検討した。 最初に、c-kitは骨髄性白血病細胞に特異的な発現をしており、SCF刺激で増殖が促進されることを確認した。白血病細胞の表面形質とc-kit発現の関連を検討した結果、c-kitの発現量が系統特異的抗原の発現に関連していることが示唆された。さらに、一部の細胞分化誘導物質がc-kitの発現を転写後調整することも判明しているが、白血病細胞上のc-kitにSCFが結合すると、c-kitの自己リン酸化が生じ、PI3-kinaseやPLC-γを経由して情報が伝達されることを深く検討した。また、ヒトmast cell由来のHMC-1細胞株で報告されているSCF非依存性のc-kitリン酸化が、一部の白血病症例で観察された。以上のことは、第4回アジア太平洋病理学会シンポジウム(平成7年5月、北京)と第57回日本血液学会総会シンポジウム(平成7年6月、名古屋)において発表した。 続いて、G-CSF受容体も骨髄性白血病細胞に発現しており、G-CSF刺激で増殖が促進されるが、正常幹細胞と異なり細胞分化は誘導されない症例が多い。G-CSF受容体の細胞内領域には増殖関連部位と分化関連部位が別個に存在するため、白血病細胞においてここに構造異常が存在する可能性がある。我々は先天性好中球減少症患者のG-CSF受容体で点突然変異を証明している。多数例の白血病症例でG-CSF受容体遺伝子の構造異常をNonRI-SSCP法を用いてスクリーニングしたところ、複数例で異常バンドを認めた。これらの症例において、現在、遺伝子配列を検索中である。以上のことは第1回福岡国際医学シンポジウム(平成7年11月、福岡)にて発表した。
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