エリスロポエチン受容体(EpoR)には完全長型(EpoR-F)と細胞内領域欠損型(EpoR-T)が存在し、赤血球分化に伴ってEpoR-TからEpoR-Fへと遺伝子レベルでのswitchingが起こる。さらにEpoR-Tが存在する細胞ではエリスロポエチン(Epo)存在下でも細胞のアポトーシスを阻止できないことが知られている。その分子機構は未だ明らかにされていないが、我々はEpoR-F・EpoR-Tをともに有するBa/F3-FT細胞ではEpo添加時にc-jun遺伝子が誘導されずアポトーシスを阻止できないこと、このBa/F3-FT細胞にc-jun遺伝子を導入し恒常的にc-Junを発現させたところ、Epo添加でアポトーシスを阻止できるようになったことより、EpoRを介したアポトーシス抑制にc-Junが重要な役割を担っていることを明らかにした。さらにこのEpoR-Tを発現させることによるアポトーシス抑制機構の破綻は、ヒト細胞株(UT-7)においても同様に観察され、かつEpoR-T/EpoR-F比が大きいほどアポトーシスを阻止しにくいことが分かった。すなわちこのEpoRを介したアポトーシス抑制シグナル伝達機構が、2種類のEpoR発現比により制御されている可能性を明らかにした。
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