我々は、ラット小腸移植モデルにおいて、graft再灌流障害における炎症性サイトカイン(IL-1、TNF)の作用を検討した。現時点までに以下の研究成果を得た。 (1)ラットの上腸間膜動脈の虚血再灌流モデルではcontrol群(無投与群)に比較して抗IL-1、TNF作用を持つ薬剤を投与すると生存率が有意に改善した。また、Platlet Activating Factor Antagonist(PAF antagonist)の投与でも生存率は有意に改善した。PAF antagonistも炎症性サイトカインの作用を抑制することが報告されており、虚血再灌流モデルでは炎症性サイトカインの作用の抑制で生存率の有意な改善が得られることが判明した。現在、小腸移植モデルにおいて検討中である。 (2)ラット小腸移植後の虚血再灌流時の微小循環障害を生体顕微鏡システムを用いてin vivoで観察し、視覚的に解析した。1時間保存群と5時間保存群で比較検討したところ、保存時間の延長とともに粘膜層のcapillary、粘膜下層のpostcapillary venuleにおいて白血球血管内皮反応が有意に上昇した(p<0.01)。灌流血管率は、粘膜、筋層で5時間保存群で有意に低下した(p<0.05)。組織学的には5時間保存群においてのみ粘膜層に限局した障害(villiのdenudation、好中球浸潤)を認めた。上記のような微小循環障害がラット小腸移植後の粘膜障害の一因として推察され、保存に伴う組織障害が明らかではない段階でも生体顕微鏡により微小循環レベルでの障害の評価が可能であった。 今後もラット小腸移植における炎症性サイトカインの役割の検討並びに生体顕微鏡システムを用いたin vivoでの観察を進める予定である。
|