直腸前方切除後の機能を、多様な面から測定し、術後排便機能障害に影響を及ぼす因子を検討した。直腸低位前方切除術例、6例を対象とした。すべての患者に対して検査の意義を説明し、同意を得た。術前及び術後3カ月の、直腸肛門内圧測定検査の結果、最大肛門管静止圧はそれぞれ、平均80cmH20、平均70cmH20であり、最大肛門管随意圧はそれぞれ、平均150cmH20、平均120cmH20であり、術後肛門括約筋機能低下を認めた。また、直腸貯留能測定は、自作バルーンを用いて直腸最大耐用量を測定した。術前及び術後3カ月のそれぞれは、平均180ml、平均150mlであり、直腸貯留能の低下を認めた。術前及び術後3カ月の肛門括約筋筋電図検査の結果、静止時はそれぞれ、平均35μV/DIV、平均30μV/DIVであった。収縮時はそれぞれ、平均70μV/DIV、平均60μV/DIVであり、直腸肛門内圧測定の結果と相関性を示した。レーザードップラー血流計を用いた、腫瘍及び吻合部の血流量測定検査では、術前及び術後3カ月で、それぞれ平均65ml/min/100g、平均45ml/min/100gと血流量の低下を認めた。体液性腸管運動調節性因子の測定では、術前術後のガストリン値に差は認められなかった。以上より、直腸低位前方切除後の排便機能障害は、肛門括約筋の軽度障害、便貯留能の低下、吻合部血流量の低下による機能障害である可能性が示唆された。今後、さらなる症例数の追加が必要である。
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