膵癌症例は予後は極めて不良でありその予後を左右する因子として術後高率に発生する肝転移が重要である。従って膵癌治療において治療成績向上を目指す上では術後転移群の予測とそれに対する適切な坑腫瘍療法が必要となる。術後転移も含め悪性疾患の予後はその腫瘍の持つ生物学的悪性度(腫瘍増殖能)と転移浸潤能の程度に依存しており両観点からの研究が必要である。膵癌の生物学的悪性度(腫瘍増殖能)については腫瘍細胞核中のargyrophilic nucleolar organizer regions(Ag-NORs)数、Ag-NORs面積をコンピューター画像解析装置により計測し膵癌腫瘍細胞増殖能の判定に極めて有用であること、腫瘍細胞核中DNA量、DNA ploidy patternも同時に画像解析装置により評価し膵癌における腫瘍細胞核中Ag-NOR数、Ag-NOR面積と腫瘍細胞核中DNA量との間に正相関があることを報告した。また膵癌腫瘍細胞中のneuron specific enolase(NSE)の発現を検討し浸潤性膵癌の約52%にその発現を認め、さらに膵癌神経浸潤とNSE発現率との間に有為な正相関があることを報告した。また膵癌腫瘍細胞におけるNSE発現細胞は腫瘍細胞核DNA量は有意に高値を示し、Ag-NOR数、Ag-NOR面積も有意に高値を示した。このように膵癌の生物学的悪性度について多面的に検討を加えた。その成果を各方面において発表した。
|