1:従来、ラット肝の再潅流には、定圧潅流装置を用いていたが、潅流圧の維持は、マノメーターに液面センサーを組み合わせた開放系を用いており、その精度に問題があった。そこで、当該科研費により、低圧トランスデューサーを用いて、コンピュータによって潅流圧をフィードバックコントロールする2号機を制作し、下記の研究に用いた。2号機では、潅流液温もコンピュータ制御とし、その精度は格段に向上した。結果は裏面の論文、学会で報告した。 2:上記の定圧潅流装置を用いて、再潅流早期の再潅流障害の原因を検討した。 (1)University of Wisonsin(UW)液で24時間保存したラット肝を、ラットの全血を用いて再潅流し、この潅流液を用いて、無保存の肝を再潅流した。その結果、再潅流後の肝微小循環は影響を受けず、再潅流障害は、白血球の活性化などの血液側因子だけでは成立せず、臓器側の因子が必要であることが強く示唆された。 (2)白血球のローリングに関与する接着因子であるセレクチンファミリーに対するモノクローナル抗体を用いて、再潅流障害におけるセレクチンファミリーの役割について検討した。ラット肝を抗セレクチンファミリーモノクローナル抗体を含むUW液で24時間保存した後、同モノクローナル抗体を含む潅流液で再潅流した。その結果を、抗セレクチンファミリーモノクローナル抗体非添加群と比較した結果、微小循環が有意に改善されていることが明らかになった。同様の実験を抗インテグリンファミリー、および抗免疫グロブリンスーパーファミリーモノクローナル抗体を用いて行ったが、微小循環の改善は認められなかった。これらの結果より、肝の冷保存再潅流早期の微小循環障害には、接着因子の中でもセレクチンファミリーが関与していることが強く示唆された。これらの結果は表面の論文、学会で報告した。
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