研究概要 |
肝細胞癌の肝静脈浸潤を遠隔転移の第一段階ととらえ、その遺伝子産物の変異をとらえることを目的に以下の検討を行った。 1.肝静脈浸潤肝細胞癌の臨床病理学的特徴 肝細胞癌切除例450例中肝静脈浸潤肝細胞癌の頻度は36例(8%)であった。最小腫瘍径は2.4cmであったため、対象症例を2.4cm以上の肝細胞癌として検討したところ、肝静脈浸潤を認めない症例に対し、有意に腫瘍径は大きく、被膜浸潤、門脈浸潤、肝内転移の頻度は高く、さらに分化度は低分化のものが多いことがわかった。 対照群の設定 肝静脈浸潤に特有な遺伝子変異の解析において対照群の設定は重要である。検討1でわかる様に腫瘍径でのみ条件を設定しても肝静脈浸潤肝癌と同等の進行度の対照群の設定は困難である。そこで肝静脈浸潤肝癌が高頻度に門脈浸潤を伴っていることに着目し、(32/36 88.9%)、対照群はI.肝静脈浸潤がなく、II.腫瘍径2.4cm以上、III.門脈浸潤を認める67例とした。背景因子では分化度以外に統計学的有意な因子はなかった。分化度は有意に肝静脈浸潤群で低かった。 免疫組織学的検討 まずこれらの症例のパラフィン包埋切片においてnm23のモノクローナル抗体にてABC法をもちいて免疫組織学的に検討したが明らかな陽性例は認めなかった。 今後の展望 免疫組織学的にp-53,Ki-67について検討する予定である。さらにmicrodissection法を用いた遺伝子異常の解析を行う予定である。
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