遺伝子組み替えによって作製したキメラ化(ヒト/マウス)A 7-Fab分画を用いて、安全で有効な膵癌のイメージングやターゲッティング療法を実現するのを目的として、以下の研究を行なった。効率的にイメージングやターゲッティング療法を行なうには、標的癌組織に標識抗体や複合体が到達したのちに血中や正常組織に残存する抗体などが速やかに排泄されるのが有利であると考えられる。 ヒト膵癌移植ヌードマウスに^<125>I標識キメラ化A 7-Fab分画を静脈注射して腫瘍集積性について検討したところ、^<125>I標識キメラ化A 7-Fab分画は投与後早期から腫瘍に集積し、血液や正常臓器からは急速に排泄された。これより、放射性同位元素をキメラ化A 7-Fab分画に結合することによって効率の良い膵癌のイメージングが可能であると考えられた。また、キメラ化A 7-Fab分画は投与後早期に多量に膵癌組織に集積するため、NCSのように抗腫瘍効果が生体内で失活しやすい抗癌剤の担体として有用であると考えられる。そこでキメラ化A 7-Fab分画とNCSとを結合してキメラ化A 7Fab-NCS複合体を作製した。そのヒト膵癌に対する抗腫瘍効果をin vitroで検討したところ、従来のA 7-NCSと同様にNCS単独より約2.5倍強かった。また、ヒト膵癌移植ヌードマウスにキメラ化A 7Fab-NCSを実際に投与して、その抗腫瘍効果を従来のA 7-NCSやNCSと比較したところ、抗腫瘍効果はキメラ化A 7Fab-NCS、A 7-NCS、NCSの順に強く、キメラ化A 7Fab-NCS投与群のみで膵癌の増殖が完全に抑制された。 以上より、キメラ化A 7-Fab分画はヒト膵癌のイメージングやNCSを用いたターゲッティング療法に有用であると考えられた。
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