1.消化器癌患者(胃癌67例、大腸癌45例、食道癌18例、膵癌20例、肝癌16例)と、胆石症と鼠径ヘルニアの良性疾患63例おいて、術前採血を行い好中球機能を測定した。好中球スーパーオキサイド産生能はいずれの癌でも良性疾患より抑制されており、特に胃癌、大腸癌、肝癌患者では有意に低下していた。胃癌の進行度別に好中球スーパーオキサイド産生能を比較すると、癌が進行するに伴い低下し、特にstage IVではstage Iより有意に低下していた。しかし、好中球貧食能は良性疾患と癌患者で有意な差がなかった。胃癌のうち術後に感染症を発症した症例は、好中球スーパーオキサイド産生能が、術後経過良好な症例より術前から有意に低下していた。汎発性腹膜炎などにより術後にDICとなった重症感染症11例の好中球スーパーオキサイド産生能を、術後経過良好の胃癌30例の1週目と比較すると有意に低下していた。健常人と進行胃癌患者で好中球の細胞質と細胞膜のPKC活性を比較すると、癌患者ではFMLP刺激時とPMA刺激時の好中球細胞膜のPKCの活性が低下していた。 2.胃癌17例の好中球スーパーオキサイド産生能の術後変動をみると、手術直後の4時間目に著しく上昇し、1日目に術前値よりも低下して、1週間後には術前値に回復した。食道癌6例では術後早期は同様の変動をしたが、術前値に回復するのに2週間かかった。 3.消化器癌患者の未梢血をin vitroでOK432により刺激すると、好中球スーパーオキサイド産生能が濃度依存性に増強した。OK432で刺激すると好中球細胞膜のPKC活性が上昇したが、その反応は癌患者で弱かった。 4.術前の好中球スーパーオキサイド産生能が低下していた胃癌6例に対して、OK432を5K.E.隔日に3回皮内投与すると、有意に上昇し、術後経過も良好であった。
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