研究概要 |
実験はブタを用い、頚静脈に送血用カニューレを挿入、大腿静脈から下大静脈に、脾静脈から上腸間膜静脈に脱血用カニューレを挿入し、Bio-Pumpを用いた血流の閉鎖回路を作成した。Pumpを開始して下大静脈、門脈、肝静脈、肝動脈をクランプし、肝の無血視野を確保した。第一段階は60分の肝血流遮断で行い、直前・直後・30分後・60分後・48時間後に大腿動脈、門脈、下大静脈、肝静脈より採血し、GPT、LDH、T-Bil、過酸化脂質、肝汁酸、ケトン対比(動脈、肝静脈のみ)、ヒアルロン酸を測定して検討した。その結果、遮断後にGPT、LDHがやや高値を示したものの、ほぼ満足できる結果であり、腸管の鬱血もなく、術後の回復も良好であり、Bio-Pumpによるバイパス下の肝血流遮断のモルを確立できたと思われ、無血視野下の肝切除術への応用が期待される。第二段階として、60分の肝血流遮断中に4℃ラクテックによって門脈より落下式に肝灌流を行ったところ、GPT、LDHの上昇を軽度で、さらに肝機能障害を防ぐのに有効と思われた。第三段階として、120分の肝血流遮断を行ったところ、総ての採血部位にて120分後にGPTが150IU/I台、LDHが8500〜9500IU/I、ヒアルロン酸が1400〜1800ng/mlと高値を示し、阻血による肝機能障害は60分の血流遮断では軽度であるが、120分では重篤になることが示唆された。現在、120分の肝血流遮断下に門脈より4℃ラクテックによる肝灌流を行い、バイパス下に肝血流遮断時間の延長が可能かどうかを検討中である。今後の計画として灌流液を(1)4℃ラクテック+プラスマネート・カッター、(2)Modified UW、(3)4℃ラクテック+His, Aspなどのアミノ酸製剤にして、最も適切な肝灌流液の決定を行う。また、癌治療を前提にして、抗癌剤を灌流し、肝における血中濃度を測定たり、灌流液を42℃まで加熱し肝の温度変化を見て、今後の新しい抗癌剤治療、温熱治療に応用が可能か検討する計画である。
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