研究概要 |
1、肝細胞癌患者48人の肝組織からsubtype別にHCV-RNAの検出を行った結果、HCV-RNAが検出されなかった群、1種類のsubtypeのみが検出された群、2種類以上のsubtypeが検出された群の3群に分けられ、この3群について、肝機能(GOT,GPT,ALP,G-GTP,TB,ALB,PT%)、組織型、腫瘍数、腫瘍径、健存率、MTT-assayによる抗癌剤感受性などの臨床腫瘍学的特性を検討してみた結果、肝機能(GOT,GPT)については、検出されたsubtypeの数が多くなるにつれ異常値を示す患者の数は有意に多くなったが、その他の項目に関しては3群間で有為な差は認められなかった。 2、血中HCV-Ab陽性の非肝細胞癌患者の生検肝から検出されたHCV-subtypeの種類、数は肝細胞癌患者の肝組織から検出されたHCV-subtypeとの間に有為な差は認められなかった。 3、血中HCV-Ab陰性かつ肝組織中HCV-RNA陽性の症例また、血中HCV-RNA陰性かつ肝組織中HCV-RNA陽性の症例は、血中HCV-Ab陽性かつ肝組織中HCV-RNA陽性、血中HCV-RNA陽性かつ肝組織中HCV-RNA陽性の症例に比較し肝機能は良好であったが、他の臨床腫瘍学的特性に差は認められなかった。 4、肝組織と血液の両方からHCVのsubtype別RNAの検出を行い得た29例については、検出されたsubtypeに解離を認めたが、血中から検出されたsubtypeは必ず肝組織中からも検出された。 以上の結果から、複数のHCV-subtypeの感染が、肝機能の悪化につながり、肝細胞障害の激しいほどウイルスが肝組織から血中へと流出しやすいが、感染しているsubtypeの種類、数等と肝発癌には直接の関連性は無いことが判明した。 また血中と肝組織中では、ウイルスの存在や検出されるsubtypeに解離が認められることから肝炎治療に重要な感染しているsubtypeの決定には肝組織の検討が必要であることが判明した。
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