重症感染症改善に有効なG-CSFとその投与によって発生する確率の高いARDS発生予防に好中球や単球や選択的な接着因子であるendothelial-leukocyte adhesion molecule-1(ELAM-1)を併用して、その効果を検討した。 1)C3H-HeJ マウス(8週齢、雄性、体重約20g)をもちい、Wichtermanらの方法に準じた盲腸結紮、穿刺法にて腹膜炎を作成、腹膜炎作成直後より、1)生食100μl/日/皮下投与、2)G-CSF100μl/日、皮下投与、3)G-CSF100μl+抗ELAM-1抗体200IU/kg/日/皮下および腹腔内投与、を3日間施行し、その際の生存率を検討したところ、G-CSF+抗ELAM-1抗体投与群で有意の生存率の延長を認めた。 2)上記各群を処理後の24時間目にネンブタール麻酔下に開腹し、腹部大動脈よりヘパリン採血の後、Ficoll-Hypaqueを用いた遠心法にて顆粒球を採取し、顆粒球20X10^6/mlをHbSS-2に浮遊させたの後、^<125>I抗ELAM-抗体0.1mCi(specific activity: 1.25 μCi/μg)を加え、ELAM-1について検討したところ、抗ELAM-1抗体非投与群において有意のELAM-1の発現を認めた。 3)貪食能、活性酸素産生能、H_2O_2産生能に関して検討したところ、白血球貪食能には3群間に有意差を認ず、活性酸素産生能では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において有意に高値を示した。 4)組織学的検討では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において、より高度の肺障害を認めた。 以上より、G-CSFは重症感染症において、その感染症の軽減を介して臓器障害を軽減するが、一方で危惧される白血球を増加せしめることによる臓器障害には細胞接着因子に対する抗体投与にて対応できると考えられる。
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