本科学研究費補助金により、骨格筋補助心による体液性因子および自律神経系の反応に関する研究と、骨格筋補助心作成の手術侵襲軽減に関する研究を行った。 当初、イヌの心不全および骨格筋補助時の体液性因子および自律神経系の反応に関する研究を計画した。アドリアマイシンにより安定した慢性心不全を作成することができず、イヌが死亡、あるいは不十分な心不全にどとまったため十分な検討を加えることができず継続して研究することとなった。 骨格筋補助心作成の手術侵襲軽減に関する研究の成果は下記の通りである。 骨格筋補助心手術は心不全患者の症状を改善するものではあるが、手術侵襲が大きく、また手術後2カ月程度は心補助効果が得られないことから、ニューヨーク心臓協会機能分類四度等の重症すぎる心不全症例は耐術できないため手術適応から除外されているのが現状である。一般外科手術、胸部外科手術で用いられている内視鏡手術の手法を応用すれば手術侵襲を軽減でき、ひいては手術成績の向上、適応の拡大につながると考えられる。イヌを用いて胸腔鏡下の骨格筋補助心作成手術の手技を検討した。5頭の雑種成犬を右側臥位として、左広背筋弁を通常の手術手法を用いて作成した。胸腔鏡下に心膜を切開し心臓の大きさを計測し、胸腔外で同じ大きさの型を作成し、心臓の代わりに広背筋弁を巻き付け仮止めする。心臓に広背筋固定用の糸を順次かけ、これを胸腔外で広背筋に固定してゆく。胸腔内に広背筋弁を挿入し糸を結紮し骨格筋補助心作成手術を完了する。筋肉の電気的トレーニングの後に血行動態を計測すると、大動脈圧、および下行大動脈血流量はそれぞれ広背筋弁電気刺激により9%、14%上昇した。これは、これまでの通常の手術手技を用いた骨格筋補助心とほぼ同等の補助効果である。 本科学研究費補助金に基づく研究により、胸腔鏡下の骨格筋補助心作成手術の手技を確立する事ができた。
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