研究概要 |
生活様式の欧米化に伴い冠動脈疾患は増加の一途をたどり,開心術における冠動脈バイパス術の比率は半数以上を占めている。冠動脈バイパス術におけるグラフト材料としては大伏在静脈,内胸動脈,胃大網動脈,下腹壁動脈が利用されている。本研究は手術の際に得られた各種グラフトの血管作動性物質に対する反応を検討した。 血管収縮性物質に対する反応 1.KCl,ノルアドレナリン,エンドセリンに対する収縮は胃大網動脈が最も強く,内胸動脈と下腹壁動脈は同程度であった。2.ドーパミンに対する収縮は内胸動脈が強く,胃大網動脈はそれよりも弱かった。3.ヒスタミンに対しては内胸動脈と下腹壁動脈は同程度の収縮を示したが,胃大網動脈では収縮を認めなかった。4.セロトニンに対しては内胸動脈と下腹壁動脈は同程度の収縮を示したが,胃大網動脈はそれよりも弱かった。 血管弛緩性物質に対する反応 1.アセチルコリン,ブラジキニンに対する弛緩は胃大網動脈が最も強く,内胸動脈と下腹壁動脈は同程度であった。2.ニトログリセリンに対する弛緩は内胸動脈,下腹壁動脈,胃大網動脈とも同程度であった。3.ドーパミンに対する弛緩は胃大網動脈が最も強かったが,内胸動脈と下腹壁動脈ではほとんど弛緩を認めなかった。 内胸動脈の長期開存性については異論のないところである。本研究の結果をふまえ今後胃大網動脈,下腹壁動脈の臨床成績の検討が望まれる。
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