研究概要 |
【対象と方法】PVG(RT1c)をドナー,ACI(RT1a)ラットをレシピエントとするallogenic移植モデルを用いた.ドナーの大動脈弁を上行大動脈とともに摘出し凍結保存した.凍結保存1週間後に解凍し,顕微鏡手術下にレシピエントの腹部大動脈に大動脈弁を上行大動脈とともに導管として異所性に移植した(A群).凍結保存を行わないallogenic移植群を対照群(B群)とし,移植後に大動脈弁葉を摘出し,免疫組織染色(抗RT1a抗体,抗RT1c抗体)により移植大動脈弁組織におけるドナー由来(RT1c陽性)細胞とレシピエント由来(RT1a陽性)細胞それぞれの存在分布を調べた.【結果】移植後1週間では両群とも導管は開存していた.A群では内皮細胞層は有意には染色されず,結合組織にもRT1a陽性の細胞の存在は明確ではなかった.B群でRT1a陽性の細胞浸潤が顕著であった.現在、移植後長期間での変化を追うべく観察している.【考察】ラットを用いた同種弁の移植実験では,短時間の結果であり今後の追跡が必要ではあるが,凍結保存を行わなかったB群における反応を白血球浸潤と考えると炎症ないしは拒絶反応を示唆するものである.一方,A群では急性期の著明な細胞浸潤が観察されず,宿主内で凍結保存組織の抗原性が認識されにくいことが示唆された.【結語】凍結保存ラット同種弁の移植実験を行い,移植組織は凍結保存により抗原性が低下し,宿主内での強い拒絶反応からは回避されることが示唆された.
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