研究概要 |
高度心不全に対する異種心を用いた循環補助の可能性に関して、異種移植心を一時的な循環補助として用いた場合にそれに続く同種移植心の超急性拒絶反応の免疫学的機序などの点が免疫学的問題点として残されている。異種感作後の同種心移植時の免疫反応を実験的に検討し免疫抑制剤併用療法の効果について検討した。Golden-Hamsterを異種donor、Wister-King ratを同種donor、Lewis ratをrecipientとした。異種皮膚移植をラット背部に施行後7日までに同種心移植をOno-Lindsey法に従い異所性心移植を施行した。対象を異種皮膚移植期間、同種心移植期間にそれぞれ無投与群、免疫抑制剤を使用した群を設定、免疫抑制剤投与FK0.5±DSG5mg/kg/day連日投与に統一した。異種皮膚移植期間無投与群での皮膚移植片は移植後7日で完全に拒絶されたが、免疫抑制剤投与群では皮膚グラフトは完全に生着した。続く同種移植心のグラフト生着日数は異種移植期間無投与群の80%に超急性拒絶反応を認めた。これが異種抗原感作により惹起されたことを確認するため抗異種抗体価を求めると、免疫抑制剤投与群では抗体価は有意に抑制されていた。拒絶されたグラフト心筋の組織学的所見は心筋内血管の血栓閉塞と心筋内出血を免疫組織染色では心筋内血管の内膜周囲に1gM,C3の沈着を認め、液性免疫の関与が示唆された。これらの所見は免疫抑制剤投与群では認められず、FK0.5+DSG5mg/kg/dayの免疫抑制剤投与はブリッジ前後の免疫抑制療法として有効であると考えられた。
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