研究概要 |
欧米の報告では最近、従来肝臓の保存液として開発されたUniversity of Wisconsin(UW)液を心保存に使用し、臨床的にも既存の保存液と比較し優位性を示唆した報告がみられる。そこで今回保存液としてはUW液を使用し、保存に先立ちcyclocreatine phosphate(CCrP)を投与し、より長時間の心保存が可能であるかいなかを研究した。 【対象及び方法】家兎を用い、以下の4群で比較検討した。I群;CCrP(-)、II群;CCrP50mg/ml、III群;CCrP100mg/ml、IV群;CCrP200mg/ml。CCrP投与後3時間後に心摘出し、4℃UW液に浸漬保存し、保存後Langendorff回路に装着し、15分間の再灌流後、45分間のworking modeとし、その後aortic flow,coronary flowを計測し、心機能を評価した。心機能測定後、摘出心を凍結し、心筋内ATPおよびCCrPを測定した。 【結果】保存後の心機能はI群に比しII;CCrP50mg/ml投与群では有意な変化は見られなかったが、III;CCrP100mg/ml、IV;CCrP200mg/dl投与群においてコントロール群に比し、良好に心機能が温存される事を確認した。心筋内ATP量についても同様の傾向が認められたが、心筋内CCrP量に関しては、測定値のばらつきが大きく、手技上の問題と思われた。 【考案】以上よりCCrP投与により、心機能、心筋内ATPが良好に温存され、心保存に100mg/ml以上の投与で有用であったが、至適投与量、その作用機序の解明には、今後さらに検討が必要であると考えられた。
|