研究概要 |
頭蓋内圧(ICP)脈波は、頭蓋内血液量が心周期により変動することで発生する。従って我々は、duplex sonographyにより両側ICAと両側VAの血流速脈波を測定し、一心周期のおける頭蓋内動脈血液量(CBVa)の経時的変動を計算した。このCBVaの変動からICP脈波を解析し、コンプライアンス(C)を測定した。埋め込み式頭蓋内圧計(OSAKA telesensor)を頭部に設置したV-P shunt症例(n=3)を対象にした。 方法:OSAKA telesensorにてICP脈波を、超音波断層装置(東芝社製,SSA-260A)の7.5MHzのパルスエコープローブで両側ICAと両側VAの血流速脈波と血管径を測定した。各血管の血流速と血管経から血流量を求め、心電図のR波のピークを基準とした一心周期における全脳血流量(CBF)の経時的な変動を計算した。毛細血管血流は、ほぼ定常流であるので、CBFから定常血流量を引いたものを積分し、一心周期におけるCBVaがどの様に変動するかを求めた。このCBVaの変動とICP脈波との関係を求め、更にはC=CBVaの変動/ICPの脈圧を計算した。 結果:収縮期には、CBVaが直線的に増加(2.7±0.4ml)して、ICPはこれに比例して上昇した。その後拡張期に、CBVaが減少に転じた時点でICPも低下した。この時期には、緩徐にCBVaが減少するにも関わらず急激にICPが降下する時期と、それに続く、CBVaの減少に比例してわずかにICPが低下する時期があった。また、Cは1.35±0.19ml/mmHgであった。本法を応用することにより、頭蓋内圧計とドップラー血流計から非侵襲的なコンプライアンスの測定が可能であった。また、ICP脈圧とCBVaとの関係で見られた3 phaseの起源は不明であるが、頭蓋内圧環境の何らかの指標となるものと思われた。
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