我々は、1990年から独自に富士フィルム社製低圧用プレスケール(感圧紙)をラミネートし耐水性としたうえで、人工膝関節術中に使用し、脛骨大腿関節面及び膝蓋大腿関節面に挿入し、適正な圧分布が得られているかどうかを調査した。そのデータにより、靱帯の解離やコンポーネントの設置位置の変更を行った結果、内側側副靱帯、外側支帯の解離を最小限にしたうえで、術後の良好な関節の安定性及び可動域が確保され、有用であることを1995年アメリカ整形外科年次総会(American Academy of Orthopaedic Surgeons)で報告した。その結果、A.A.O.Sの研究組織としてのMusculoskeletal Clinical Research Registerに日本からは初めて選出され、♯160の研究プロジェクトとして登録され、研究の公開及びその推進が図られることになった。 今回、ラミネート紙の厚さの薄い、広範な測定範囲を有する改良された感圧紙の導入を行った結果、正確な定量的応力の計測を行うことが可能となった。また、感圧紙の固定法にも改良を施し、それぞれのコンポーネントの関節面形状に正確に合致した感圧紙の作製を行った。 しかし、計測時における肢位により、定量値の再現性の低下することが考えられるために、同一の肢位をとることが可能である下肢の固定具あるいは滑動装置を製作し、臨床応用することが今後の課題である。 また、術中にリアルタイムで定量的圧計測しうる新しく開発された測定機を使用することにより、さらに望ましい手術手技の向上に貢献する必要がある。今後は、人工膝関節のみならず、どの関節の人工関節においても耐久性を高めるためには、適切なる応力の分散の獲得が重要課題である。 従って、我々の方法を採用し手術操作を是正することは、有意義であると考えられ、多施設での臨床使用を行うことが望ましいと思われる。
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