椎間板ヘルニアにおける根性疼痛発生のmechanismについて、特に根性疼痛が機械的圧迫以外の要因によっても発現するであろうという見地に立って研究を行っている。本研究の計画当初は、Ratの自己髄核を神経根周辺に置く際に、前方approachで髄核を採取する計画であった。しかしながら前方approachは、侵襲が大きいうえに、髄核の採取量が十分でなく、また交感神経幹を損傷する可能性があり、モデルとして不適切であった。そこで、豊富な髄核を有するtailに目を付け、自己のtailから採取した髄核を神経根後方に載せることにより、モデルを確立することができた。本モデルを行動薬理学的に評価したところ、神経根の展開のみを行ったsham群に比べ、処置後3日目から3週間目くらいまでの間に機械的刺激に対し、患側後肢で明らかにhyperalgesiaを生じていた。一方、熱刺激に対する反応は一定の傾向を示さなかった。すなわち、機械的圧迫を無視し得る状況下で髄核成分により、根性疼痛を引き起こす可能性が示唆された。また臨床的によく用いられる硬膜外ブロツク(ステロイド注入)の効果を、本モデルを用いて検討したところ、硬膜外ステロイドによりmechanical hyperalgesiaが抑制される傾向を示したが、統計学的に有意差は得られなかった。また熱刺激に対する反応はステロイドにより、特に修飾されなかった。以上、行動薬理学的に得られたこれらの結果をもとに、さらに免疫組織学的な検索を進めていく予定である。
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