クモ膜下フェントラミンはラットにおける侵害刺激の閾値を減少させる 〈はじめに〉ラットやネコにおいて、クモ膜下腔ノルエピネフリン投与は量依存性の鎮痛効果を示し、その効果はフェントラミンで拮抗される。今回、クモ膜下腔へのフェントラミン単独投与による侵害刺激の閾値への影響を検討した。 〈方法〉雄ウィスターラット32匹(11週、体重339±35g)をペントバルビタール40mg/kg腹腔内投与により麻酔導入し腹臥位とした。L5棘突起上から皮切を加え棘突起周囲を剥離後、実体顕微鏡下にL5の椎弓上部に孔を開け硬膜外腔に到達した。硬膜切開を加えカテーテルを頭側に約1cm挿入し、孔上に筋肉片をのせ瞬間接着剤で固定した。100μlの生食を注入し漏れのないことを顕微鏡下に確認し、筋層と皮膚を縫合した。麻酔覚醒後、運動麻痺のないことを確認した。3日後、フェントラミン40μg(20μl)をカテーテルから注入し120分後までpaw pressure testとhotplate testを行い疼痛閾値を比較した。実験終了後、2%リドカインをカテーテルから注入しカテーテルがクモ膜下腔にあることを確認した。 〈結果〉Paw pressure testによる後脚の逃避反応の閾値は、投与前で165.0±42.1gであったものがフェントラミン投与10分後で107.1±29.0g(p<0.01)と35%減少し、90分後に投与前値に戻った。温度刺激(hotplate test)による、後脚なめるまでの潜時はフェントラミン投与10分後の32.9±15.1秒から10.5±6.22秒(p<0.01)へと68%減少し、60分後まで有意に減少した(p<0.01)。2匹はカテーテルからリドカインを注入しても運動・視覚障害がみられなかったため除外した。他の30匹は後脚の麻痺や痛覚低下が認められた。 〈結論〉ラットにおいて、クモ膜下腔フェントラミン投与は侵害刺激に対する閾値を減少させた。
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