ランダムに犬の迷走神経を刺激することによって心拍数を変化させ、刺激インパルスから心拍数変化への伝達関数解析することに成功している。その結果、他の報告にあるようにα-クロラロース麻酔下(吸入麻酔薬なし)ではその振幅は周波数が増えるに従って徐々に低下し、この伝達系のロ-パスフィルターとしての性質を表しているようである。コヒーレンスも高周波数領域で低下する傾向を示したが、全体的にはかなり1に近い値を示しており、この解析の信頼性が裏付けられている。吸入麻酔薬(イソフルレン1.4%、0.7%)はこの振幅を用量依存性に低下させていく傾向にあった。コヒーレンスは吸入麻酔薬投与によってやや低下するように思われた。刺激の平均周波数は2Hzと6Hzを用いたが、振幅は2Hzの時の方が大きい傾向を示し、コヒーレンスは6Hzの方が大きい傾向を示した。これらの結果から吸入麻酔薬は中枢性に循環制御に影響を与えるのみでなく、迷走神経から左心室までの伝達(迷走神経、洞房結節、房室結節など)を抑制しているのではないかと推測される。これらの結果は本年度中に学会発表する予定である。また今後の計画としてはイソフルレンに比し刺激伝導系に対する抑制作用が強いことが予想される静脈麻酔薬のプロポフォールなどについて同様の検討を行っていくつもりである。
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