血液中の内因性カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)とノルアドレナリンの代謝産物であるdihydroxyphenylglycol(DHPG)を測定することにより交感神経系の情報を把握し、周術期の重症患者の管理にいかに反映できるかについて検討することを目的とした。また従来のアルミナ吸着法によるカテコールアミンの測定は、検体の前処理が煩雑で測定時間がかかることが問題であったので、測定の簡便化を検討した。 我々はDPE法による全自動カテコールアミン分析計のカラムと溶離液を改造することで検体処理および測定の簡便化、迅速化をはかることができたことから、臨床の場での内因性カテコールアミン測定を生かせる望みがでてきた。そのため今回はこの分析計を用いて、術後の硬膜外鎮痛による内因性カテコールアミンの測定値の変動を調べ、これらの内因性カテコールアミンを測定することで、生体が受けているストレスの定量化ができないかどうかを検討した。 侵襲度の高い消化管および肺の手術を受けた患者で、術前に硬膜外カテーテルを留置され、硬膜外鎮痛の効果が確認できており、さらに外因性のカテコールアミンを投与されていない10例を対象とした。術後ICU入室後に鎮痛を欲した時点と、塩酸モルヒネ(3mg)またはブプレノルフィン(0.15mg)の投与後にアドレナリン、ノルアドレナリン、DHPGを測定したところ、硬膜外への鎮痛薬投与後にアドレナリンとDHPGが有意に低下した結果が得られた。このことから内因性カテコールアミンを測定することにより鎮痛効果を定量化できる事がわかり、内因性カテコールアミンを測定することで周術期の重症患者の管理に反映できる可能性を示した。
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