今回得た科学研究費の目的は出血性ショック時及びそれに引き続くHTS投与時に、循環動態、腎交感神経活動、脳内酸素濃度を同時に測定することで、近赤外光による脳内酸素濃度と交感神経活動がどのように変化するかを検討することであった。本年度、申請者らは麻酔下家兎において、出血性ショック時に3.5%HTSを投与した場合の循環動態及び腎交感神経活動について研究を進めてきた。これまでは申請者らは、HTSを静脈内に投与した場合に、容量増加効果よりもむしろ交感神経賦活効果が生じ、その交感神経賦活が迷走神経を介するのではなく、大動脈神経、頚動脈洞神経を介することを発表してきた。そしてその反応が、心肺に存在する受容体を介するものか否かを判断するために、動脈内投与における循環動態及び交感神経活動を測定した。 その結果、40mmHgの低血圧を持続した定圧低血圧時に、大腿動脈内に3.5%HTSを投与すると、やはり、交感神経賦活が生じるが、その賦活の様式が静脈内投与時のそれと同様、交感神経活動賦活を伴った昇圧効果を認めた。しかし、大動脈神経頚動脈洞神経を切離すると、血圧上昇の立ち上がりが遅くなった。この大腿動脈投与の状況では、造影の結果、HTSは心臓などには達しておらず、3.5%HTS動脈内投与における交感神経の賦活には、骨盤内臓器や筋肉からの求心性入力が、関与している可能性が示唆された。 以上の結果を得た年度であったが、近赤外光による脳内酸素飽和度については、安定した成績が得られず、まだ検討できていない。
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