研究概要 |
平成6年度に犬分離肺循環回路を用い、血小板活性化因子(PAF)による安定した肺高血圧モデルを作成した。本研究では、PAFによる肺高血圧状態に対するNO吸入の効果について検討するとともに、内皮由来弛緩因子(EDRF)を阻害した状態でのPAF誘導性肺高血圧に対するNO吸入の効果と比較検討した。 【方法】一頭の犬(recipient犬)を笑気-halothane麻酔下に左開胸し、上葉および心臓葉を切除後、左肺下葉(LLL)にチューブを挿入して右肺との分離換気を行った。LLL肺動脈に灌流用および圧測定用のカテーテルを留置し、笑気-halothane麻酔下の別の犬(donor犬)の大腿静脈血をポンプを用いて一定流量でLLL肺動脈に送血し、LLL肺静脈からdonor犬の外頸静脈に返血した。実験系が安定した後にPAF0.1-0.3μg/kg/minを送血回路から持続投与し、実験的肺血圧状態を作成した。肺動脈圧が安定した後にNOを5,10,20,40ppmでLLLに吸入し、肺動脈圧および血液ガス値の変化を観察した。さらにEDRF合成阻害薬(L-NNA)を前処置した状態でPAFを投与し、L-NNA非前処置状態と同程度にまで肺動脈圧を増加させ、同様の検討を行った。 【結果】PAFにより増加した肺動脈圧はNOにより有意に減少したが、吸入NO濃度に依存性は認められなかった。今回の実験ではPAFにより血液ガス値に変化は認められず、NO吸入でも血液ガス値は変化しなかった。L-NNA前処置によりPAFの投与量は約1/10に有意に減少し、NOによる肺動脈圧の減少はL-NNA非前処置状態と比較して有意に大きかった。 【まとめ】PAF誘導性肺高血圧に対しNO吸入は有効であり、PAFによる肺高血圧状態にはEDRFが抑制的に作用している可能性がある。
|