本年度は、ショックにともなう血中一酸化窒素(NO)レベルの変化を電子スピン共鳴装置(ESR)による血中NO-Hbレベルの変動より観察した。また、ショック時の血管収縮能の低下について、ノルアドレナリン(NA)の反応性より検討し、さらに誘導型NO合成酵素(iNOS)選択的合成阻害剤のL-canavanine(L-CAN)の効果を検討した。 ペントバルビタール麻酔ラットに10mg/kgのlipopolysaccharide(LPS)を静注し、敗血症性ショックを作製した。コントロール群、L-CAN10mg/kgまたは20mg/kgを1時間毎に静注した3群に分けた。血中NO-Hbは、各群ともLPS投与後3-4時間より出現し、6時間後では、それぞれ1300、700、350μMと、L-CANによる誘導型NO合成の抑制が認められた。LPS投与後の血圧の低下度は、6時間後にそれぞれ対照値の62%、78%、81%であり、血中NOレベルとの関連が示された。さらに、LPS投与5時間後に1μ g/kgのNA投与による血圧の回復度は、23%、34%、48%であり、iNOS阻害がショック時の血管反応性にも有用であることを示した。一方、L-CAN単独投与による血圧の変動は、40mg/kgまで認められないことより、ショック治療におけるiNOS阻害剤の有用性が示された。 この研究をもとに、非感染の内蔵虚血再潅流モデルで同様の実験を行う予定である。また、種々の重症患者および麻酔中患者における血NOレベルの変動につき検討する予定である。
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