我々は腎細胞癌においてslow migrating gangliosidesの発現増加と転移能との関連が認められたこと、これらslow migrating gangliosidesの主要構成成分は、globo-deries gangliosidesのmonosialosyl galactosyl globoside(MSGG)およびdisialosyl galactosyl globoside(DSGG)であることを報告してきた。 そこで、ヒト腎ガン由来細胞に発現するMSGG、DSGGの発現が肺組織との接着能に関与しているかどうか検討した。方法として、DSGG、MSGGの発現型の違うヒト腎ガン由来細胞、およびヒト正常肺組織を用いてFrozen section assay(FSA)およびDynamic flow systemによるAdhesion assay、セレクチン依存性細胞接着assayを試みた。 その結果、ヒト腎ガン由来細胞はセレクチン依存性細胞接着は示さなかった。しかしFSA、およびDynamic flow system assayで、DSGGを多く発現する細胞に有意に肺組織への接着性を認め、この接着性は、抗DSGG抗体、sialidase処理によって阻害された。また、この接着性はEDTAで阻害されなかった。以上より腎細胞癌ではDSGGの発現が肺転移能に関与している可能性が示唆され、DSGGに対する肺組織側の接着分子は、セレクチン以外の、しかもCa非依存性物質であることが考えられた。
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