(1) 正常腎の近位尿細管上皮細胞にはみられないα4β1インテグリン(VLA-4)が腎細胞癌では高率に発現しており、遠隔転移の有無との間に臨床的に有意の関連が認められること、腎癌細胞株でもVLA-4が高率に発現していることを明らかにした。 (2) 次に血管内皮細胞におけるVCAM-1の発現とサイトカイン処理による変化を、蛍光抗体法、フローサイトメトリー、免疫沈降法を用いて蛋白レベルで調べたところ、無刺激では血管内皮細胞上にはほとんど発現されていないVCAM-1が、TNF-α、IL-4刺激によって一過性に強く発現されてくることがわかった。このことはRT-PCR法を用いた解析によって、遺伝子レベルでも確認された。 (3) さらにVCAM-1のリガンドであるVLA-4をもつ腎癌細胞株の血管内皮細胞への接着はこれらのサイトカイン刺激によって飛躍的に高まることが明らかになった。また、この接着は抗VLA-4抗体、抗VCAM-1抗体によって強く抑制されることから、両者の接着にはVLA-4/VCAM-1分子が強く関与していることが示された。 以上より、腎細胞癌の血行性転移にはVLA-4/VCAM-1分子ならびにTNF-α、IL-4といったサイトカインが重要な役割をはたしていることが示唆された。
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