日本産科婦人科学会倫理規定に準じて十分なinformed consent後、帝王切開施行妊婦より切開部子宮筋組織片を採取し、酵素処理にて子宮平滑筋細胞を単離した。単離した筋細胞は1〜2週間の培養にて単層に合流した。この単層の筋細胞の細胞外液を電気生理学用の標準媒液(Tyroid solution)に交換し、細胞膜に微小ガラス電極でホールセルクランプを行い、電気刺激装置により細胞膜の興奮しない過分極に静止電位を変化させ、その結果生じる細胞内向き電流からオームの法則に従ってホールセルクランプ用増幅器から細胞入力抵抗(Ro)の測定を試みた。集められたヒト子宮筋検体数の限界やヒト子宮平滑筋細胞におけるホールセルクランプ法の難易点から統計的な確証は十分得られなかったが、Roは標準媒液にβ刺激剤であるritodrineを添加することにより上昇する傾向があり、薬剤が子宮筋細胞間の電気的結合を減少させることが示唆された。すなわち、臨床的に子宮収縮抑制剤として応用されているβ刺激剤が、機能的細胞間結合の主役であるギャップ結合の透過性を変化させ、その結果、子宮収縮の抑制に重要に関与していることが推測された。今後、検体数を増加し、また、ヒト子宮平滑筋細胞におけるホールセルクランプ法を向上させ、子宮収縮促進剤を含めた他の薬剤においても同様の検討をする予定である。
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