研究概要 |
1、軽症妊娠中毒症妊婦において母体血漿中のナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP)濃度およびsecond messengerであるcGMP濃度が上昇する。これに対して重症妊娠中毒症ではANP, BNP濃度はさらに上昇するが、cGMP濃度はむしろ低下することが明らかとなった。このことからナトリウム利尿ペプチド系の破綻が妊娠中毒症の病因に関与している可能性が強く示唆された。 2、仮死胎児仮死症例において、臍帯血中ANP, BNP濃度のみならずsecond messengerであるcGMP濃度が上昇することが明らかとなり、胎児胎盤循環調節にナトリウム利尿ペプチドが寄与している可能性が明らかとなった。 3、妊娠中毒症妊婦血中のnitric oxide(NO)代謝産物(NOx)濃度は正常妊婦血中と同程度であることが明らかとなった。 4、我々は既に、羊膜細胞からBNPが分泌されることを報告しているが、羊膜細胞由来のBNPが妊娠維持に対する作用を明らかにするために、妊娠および非妊娠のラット子宮筋片を95%O_2,5% CO_2、37℃のKrebs-Henselite液中でプロスタグランジンF2αを用いて自律収縮を誘発し、BNPおよび8-brom-cGMPを累積適応しつつ等尺性張力変化を記録し、BNPの妊娠子宮収縮抑制作用を検討した。BNPおよび8-brom-cGMPの添加により妊娠子宮筋の収縮は用量依存的に抑制されたが、非妊娠子宮筋の収縮は抑制されなかった。このことから羊膜細胞由来のBNPが子宮筋の収縮を抑制し妊娠維持に寄与する可能性のみならず、子宮平滑筋は受容体レベルあるいはGキナーゼレベルにおいてナトリウム利尿ペプチドに対する反応性を妊娠期間だけ獲得する可能性が示唆された。
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