研究概要 |
カチオン化コロイド金と各種のグリコシダーゼ処理を組み合わせて蝸牛管側壁での陰性荷電部位を検討し、また銀増感処理を施し可視化することで走査電顕により表面上の分布を観察した。 1、辺縁細胞の内リンパ腔表面には陰性荷電部位を認めなかったが、らせん隆起表面の内リンパ腔表面には認めた。各種グリコシダーゼ処理により、らせん隆起表面細胞膜の陰性荷電は主としてコンドロイチン硫酸によるものであることが判明した。 2、血管条の内リンパ腔表面には陰性に荷電しているらせん隆起の上皮細胞群が入り込んでおり、さらにこのらせん隆起と血管条との境界線上には、らせん隆起上皮細胞の形態を示しながらも辺縁細胞と同様に細胞表面に陰性荷電部位を検出できない中間的な細胞を存在し、蝸牛管内リンパ腔表面には酸性複合糖質に関して移行帯が存在することが推定された。 本研究でらせん隆起と血管条の内リンパ腔表面で陰性荷電状態に差異を認め、吸収部位としてのらせん隆起と産生部位としての血管条の役割が推測された。またその境界に、辺縁細胞とらせん隆起上皮細胞の移行帯細胞とも言える中間的な細胞が存在していることが明らかとなった。 α2,8ポリシアル酸に対する特異抗体(MAb735)と神経細胞接着因子(N-CAM)に対する特異抗体を用いてモルモット内耳でのポリシアル酸の検出をも比較検討してみた。 らせん神経節細胞の膜周期、らせん板縁の歯間細胞で共に強く染まった。血管条では辺縁細胞、中間細胞及びそれらの細胞膜上で部分的に染まったいる部分を共に認めた。血管条血管は染まらなかった。蝸牛軸血管に分布する自律神経終末をMAb735のみが染色した。蝸牛軸の血管は神経支配を受けて機能していることを反映していることを確認できたもの考える。
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