1990年にUlshaferらにより、遺伝性視細胞変性ニワトリにおいて、視細胞にグルタミン酸の蓄積があることが報告された。その後我々が遺伝性視細胞変性(rds/rds)マウス網膜の免疫組織化学的検索を行った結果から、視細胞変性マウスにおいても、組織学的に変性の見られる前の生後2週齢から、視細胞でグルタミン酸様免疫反応の増加即ちグルタミン酸の蓄積が生じていることが示唆された。 今回は、マウスの両眼から採取した網膜組織をアルコールで除蛋白後アミノ酸を抽出し、微量アミノ酸分析を行うことにより、網膜全体のグルタミン酸濃度の変化を生化学的に検討した。その結果、網膜の蛋白当たりのグルタミン酸濃度は、変性のある生後3週齢、9週齢いずれにおいても正常コントロールとの間に有意差が認められなかった。このことについては、網膜の外層にある視細胞に比較的限局してグルタミン酸の蓄積が生じているとしても、網膜全体にすると平均化されてしまい、網膜全体のアミノ酸定量では差が検出されないのではないかと考えられた。もしもマウス網膜の内層と外層とを分けることができれば、さらに知見が得られる可能性がある。 今後は視細胞へのグルタミン酸蓄積の原因及び変性との関係について、その代謝酵素活性の測定や、グルタミン酸受容体の選択的拮抗剤あるいはカルシウム拮抗剤の局所投与の網膜への影響を見るなどの検討を加える。
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