研究概要 |
これまでの糖白内障の形態的検討から,長期ガラクトース食負荷により水晶体表層皮質に正常な水晶体線維層が再生することがわかっている.一方,磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)の1つ,3-fluoro-3-deoxy-glucose(3FDG)併用^<19>F-MRSは,グルコース代謝過程をin vivoにて無侵襲で追跡できる.本研究の当初の目的は,長期ガラクトース食負荷時の再生水晶体線維におけるアルドース還元酵素(AR)活性を本法により経時的に測定し,生化学的ならびに組織学的検索結果と合わせて検討することであった. 糖白内障モデルとしてガラクトース白内障ラットを用いて実験を行った.SD系雄ラット(3週齢)をコントロール群,15%ガラクトース食群,正常食変更群の3群に分けて飼育し,糖白内障を発症させるとともに正常食変更に伴う白内障の治癒過程を観察した.組織学的観察はトルイジンブルー染色後,光顕にて行い,ガラクトース群における経時的な水晶体線維膨化液化所見ならびに長期(3ヶ月以上)経過後の赤道部正常水晶体線維再生を確認した.液体クロマトグラフ法による水晶体内ガラクチトール定量では,白内障進行に伴うガラクチトールの蓄積が認められた.これらの所見は過去における低濃度ガラクトース負荷糖白内障の報告とよく一致していた.一方,MRSによるAR活性の測定にあたっては種々の問題点が明らかとなった.まず大塚電子製動物実験用7.0Tesla磁気共鳴装置では装置の測定感度が低く,摘出水晶体に対してin vitroにても充分な信号を得られなかった.また,充分量の基質(3FDG)を長時間にわたって水晶体に作用させるためには,水晶体全体の器官培養が必要であり,その培養条件を検討しなければならなかった.水晶体全体のAR活性の測定が困難であったので,さらにその再生線維におけるAR活性測定は不可能であった.以上の理由で現在のところ研究成果の発表を行いえていない.
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