研究概要 |
落屑物質は超微細構造をもち,採取できる量が限られているため,落屑物質の成分に関して,これまでは主として免疫電子顕微鏡組織化学的手法により,そのごく一部が明らかにされているに過ぎなかった. そこで本研究者は様々な種類の抗体を用いた免疫電子顕微鏡組織化学的研究により,成分の分析を進めると共に,画像解析装置を使用することにより,より詳細な分析,統計学的な検討を行った.さらに等電点と分子量で解析する2次元免疫電気泳動,およびプロテインシーケンサ(蛋白質1次構造分析装置)を用い,異なった角度からも落屑物質の成分分析を行い,両者の比較検討した. 免疫電子顕微鏡組織化学的研究により,落屑物質にはビトロネクチンなど数種の蛋白の存在が確認された.画像解析装置を用いた分析にて,ビトロネクチンは線維柱帯の落屑物質において22.6±6.9,水晶体表面で20.6±4.8,結膜で21.3±5.5,皮膚で22.7±6.3といった金粒子の集積を示し,各部位間において統計学的有意差を認めなかった.フィブロンネクチン,ラミニン,エラスチンにおいても同様に統計学的有意差がみられず,線維柱帯,水晶体表面,結膜,皮膚といった異なった部位における落屑物質は,形態学的に僅かな違いはあるものの,抗原性は極めて近いことが立証された. 落屑物質を含んだ水晶体嚢,および正常対照の水晶体嚢に対し2次元免疫電気泳動を行い,異なった部分を集積し,プロテインシーケンサにより落屑物質の蛋白質の1次構造を解析したところ,免疫電子顕微鏡化学的研究の結果に非常に近い値が得られた.症例数を増やした後,統計学的検討を行う予定である.
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