サル(Macaca fuscata)およびラットの涙腺を摘出し、collagenase・hyaluronidase・trypsin inhibitor・DNaseを含むDMEMで処理し、細胞を分散させた。それらの涙腺上皮細胞をI型コラーゲン(最終濃度2.1mg/ml)に浮遊させ、37℃でゲル化させた。trypsin inhibitor・dexamethazone・aprotinin・ITS・EGFを含有したDMEM/F-12等量混合液で培養した。培養後1・2週に固定し、一部はロ-ダミンを用いてF-actinを染色、一部はエポキシ樹脂に包埋後超薄切し透過電子顕微鏡で観察した。コラーゲンゲル内に包埋培養した細胞は、いくつかの集塊となり培養後4日目よりそれぞれの細胞は突起を伸長し始めた。培養後7日目には星状の集団となった。ロ-ダミンを用いたF-actinの染色では、弱い染色性を示した。透過電子顕微鏡による観察では、細胞表面に多数の微絨毛を認めた。 乳腺上皮細胞は、コラーゲンゲル包埋培養によって星状あるいは管腔状となり、単層培養よりもはるかに分化した機能を示すことが報告されている。涙腺においても同様に星状となり、生体内に近い分化機能を有している可能性がある。また、涙腺には性差の存在することが知られており、この培養系を用いてアンドロゲンやプロラクチンなどの涙腺機能に及ぼす効果を調べることも可能である。
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