視神経炎の動物モデルを作製するために、リン脂質であるカルジヲリピン、ミエリン塩基性蛋白を完全フロイントアジュバントとともにWistaer系ラットおよび家兎皮下に注入し、その前後で生じる視機能変化を観察した。カルジヲリピン注入は家兎を用いて行ったが、追感作を施行しても有為な視覚誘発電位(VEP)の延長は認められず、組織学的にも網膜、視神経に変化は観察できなかった。 ミエリン塩基性蛋白10mgをアジュバントとともに家兎に注入したところ、注入後約2週間より約10%の体重減少が出現し、約20msecに認められるVEP頂点潜時は2〜5msec延長した。検眼鏡的には家兎の有髄神経線維が一部脱落している変化が認められたが、組織学的な検索はまだできていない。現在研究を続行している。なお生化学的な検査を行うためにラットを用いて同様の感作をおこなっている。 これら視神経炎モデルの作製と並行して、視神経賦活療法に応用する目的で、近年発見された血管由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)の眼循環改善作用、視機能に対する影響を研究した。NO自発発生化合物であるSNAPを家兎硝子体内に注入すると、視神経乳頭血流量は注入後90-120分をピークに増加し、NOに眼循環改善作用があることが確認された。しかし一方で網膜電位図(ERG)a波振幅の減少、潜時延長などの網膜毒性の存在も明らかになり、組織学的にも視細胞層の障害が明らかに確認された。NOは現在眼科だけでなくあらゆる分野で注目されているが、本来ラジカル反応を惹起する物質であり、臨床応用には毒性の問題を解決する必要があると思われる。
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