現在までヒトT細胞性白血病ウイルス1型(HTLV-1)ぶどう膜炎(HU)の発症機構の解析を目的に、患者臨床検体を用いて分子生物学的研究を行ってきた。 ぶどう膜炎の発症には種々のサイトカインが関与していることが多数報告されている。またHU患者の前房浸出細胞から樹立したHTLV-1感染T細胞クローンにおいて、種々のサイトカインが構成的に発現していることを共同研究者が明らかにした。そこで我々はHU患者の眼炎症局所の浸出細胞におけるサイトカインの発現とその調節を明らかにすることを目的に、新鮮前房浸出細胞および末梢血単核球におけるサイトカイン遺伝子発現をRT-PCR法を用いて解析し、前房浸出細胞のサイトカイン発現の特徴を明らかにした。その結果前房浸出細胞においては、IL-6mRNAの発現が大多数の患者で検出されたが、IL-1α、IL-2、IL-4、IFN-γ、TNF-αの発現は検出されなかった。一方HU患者の末梢血単核球においては、IL-1α、IL-6、IFN-γおよびTNF-αの構成的発現が検出された。これはHTLV-1無症候性キャリアにも共通する特徴であったが、HU患者ではIL-6の発現が高い傾向が明らかになった。また、このようなサイトカイン発現パターンは、前房浸出細胞由来HTLV-1感染T細胞クローンと一致するものであった。 以上の結果から、末梢血およびT細胞クローンにおけるサイトカイン発現様式はHTLV-1感染によるものと考えられたが、眼内の浸出細胞では、サイトカイン遺伝子発現が抑制されていることが示唆された。現在この免疫抑制機構に関する解析を進めている。
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