ヒト歯原性嚢胞(含歯性嚢胞30例、歯原性角化嚢胞46例)とエナメル上皮腫53例(瀘胞型29例、叢状型28例、嚢胞型23例、棘細胞型12例、顆粒細胞型1例、基底細胞型1例を含む。)に対してEBER probeを用いたin situ hybridization、heat shock protein 70(HSP70)抗体を用いた免疫染色を施した。【結果】歯原性嚢胞では、含歯性嚢胞・歯原性角化嚢胞のどちらもEBER陽性のシグナルは得られなかった。これに対して、エナメル上皮腫では10例(19%)に陽性所見がみられた。エナメル上皮腫の組織亜型別の陽性率は瀘胞型24%、叢状型18%、嚢胞型13%、棘細胞型25%で、組織亜型別には有意差はなく、また、細胞のタイプによっても分布の差はなかった。HSP70では歯原性嚢胞では含歯性嚢胞70%、歯原性角化嚢胞76%に嚢胞上皮が反応を示した。エナメル上皮腫では53例中32例(60%)が陽性で、組織亜型別には瀘胞型41%、叢状型43%、嚢胞型85%、棘細胞型50%であり、嚢胞型の陽性率が他の組織型より有意に高かった。【考察】以上の結果は、含歯性嚢胞や歯原性角化嚢胞の成立にはEBVとの関連性は低く、エナメル上皮腫での発生・増殖にEBVが関与している可能性が考えられる。また、HSP70の局在とEBVとの相関性は認められず、HSP70は歯原性嚢胞や嚢胞型エナメル上皮腫で、嚢胞内容物や上皮の変性を誘導する刺激に対して発現していることが示唆された。
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